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『伊豆の踊子』

 『伊豆の踊子』(川端康成)

―あらすじ―
 傷心旅行で伊豆を訪れた主人公は、旅芸人の踊子達と出会った。無邪気な薫や温かい人々と触れ合うことで主人公は癒され成長していく。淡い初恋を描いた名作。


 「淡さ」が心に沁みこむ作品です。偶然にして出会い、数日の交流を経るもその想いを告げること無く、ただ別れていくというストーリー。非常に印象的で余韻が残ります。読んでいて何故か涙が出そうになってしまいました。

伊豆の踊子 (角川文庫)/角川書店

¥380
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『墨攻』(小説)

 『墨攻』(酒見賢一)

―あらすじ―
 春秋戦国時代の中国に存在した、非攻と博愛を信念とした集団・墨家が、長い戦乱の中で墨家の内部からも変化を求める声が大きくなっていた。そんな折、趙軍にかこまれた梁城から墨家に救援依頼が来る。依頼を黙殺しようとする墨家の決断に背き、革離1人が梁城へ向かう。


 漫画版は読んだことはあったのですが、原作小説は未読だったので手にとってみました。160ページと非常に短いながらも、ラストが漫画版と違うこともあり、最後の最後まで楽しんで読ませてもらいました。主人公・革離の印象も両作品でガラッと変わります。短いページ数ながらも攻城戦の様子がしっかりと濃く描かれており、オススメの1冊ですね。

墨攻 (新潮文庫)/新潮社

¥380
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『項羽と劉邦』(全3巻)

 『項羽と劉邦』(司馬遼太郎)

―あらすじ―
 秦滅亡後に現れた2人の男――項羽と劉邦。覇を争った2人の英雄は、如何に戦ったか。


 三国志は様々な著者の作品を色々と読んでいるのですが、それ以外の中国史の作品にもチャレンジしてみようと『項羽と劉邦』を手にとってみました。項羽と劉邦、それぞれの対比が面白く、わくわくしながらページが進みます。百戦百勝の項羽が最後に負けたのは何故か、百戦百敗の劉邦が最後に勝ったのは何故か、「人間力」について考えさせられる作品でした。

項羽と劉邦 (上) (新潮文庫)/新潮社

¥746
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『モルグ街の殺人事件』

 『モルグ街の殺人事件』(エドガー・アラン・ポー/訳:佐々木直次郎)

―あらすじ―
 モルグ街のアパートで発生した、親子惨殺事件。凄惨な現場の状況はとても理性のある人間の行為とは思えず、そして犯人の声をいた人々の証言には一貫性がなかった…警察が解決できないこの不可解な事件をオーギュスト・デュパンが解決する。


 海外小説にしては読みやすく面白い作品です。大概、海外小説は本筋と関係の無い情景描写がくどいのですが、この小説はあまりそのように感じられませんでした。作品としては、表題作である『モルグ街の殺人事件』はもちろん、『落穴と振子』と『早すぎる埋葬』という作品が特に面白かったです。どちらも、じわじわと死の恐怖が迫ってくるサスペンスです。短編なので、短くてサクッと読めるのも良いですね。

モルグ街の殺人事件 (新潮文庫)/新潮社

¥420
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『一休』

 『一休』(水上勉)

―あらすじ―
 室町時代を生きた破戒僧・一休宗純。彼の生き様を描く。


 『狂雲集』や『年譜』といった歴史的資料から、一休宗純の姿を読み解く伝記文学です。引用や仏教用語が頻繁に出てくるのですが、それらの基礎知識がほとんど無いため、読み解いていくのが大変でした(まだしっかり理解出来ていない部分もありますが)。しかし、作者の考えも述べつつも一休についてしっかりとまとめてあるので、伝記としての完成度は高いと思われます。一休に興味のある人には一読をお勧めします。

一休 (中公文庫)/中央公論社

¥980
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『69 sixty nine』

 『69 sixty nine』(村上龍)

―あらすじ―
 1969年、日本では学生運動が盛んになっていた。佐世保の高校に通う3年生の矢崎剣介は、生徒たちを管理せんとする教師たちや体制に反抗するため…ではなく、本当は同級生のマドンナ・松井和子の気を惹くために、親友のアダマたちと共に一大フェスティバルの開催を企画する。さらには勘違いから、学校をバリケード封鎖しようと計画する。


 いい意味で非常にバカバカしくて笑える作品です。青春小説と言うと、主人公の悩みが書かれたりして暗い話になってしまいがちですが、この小説の主人公はとにかく前向きです。それも、根底にあるのは「モテたい、恰好つけたい」という、いかにも高校生らしいエネルギーです。その膨大なるエネルギーが、フェスティバル、さらにはバリケード封鎖といった形で爆発していました。青春小説の傑作ですね。

69 sixty nine (集英社文庫)/集英社

¥460
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『ドグラ・マグラ』(下巻)

 『ドグラ・マグラ』(夢野久作) 下巻

―あらすじ―
 胎児よ 胎児よ 何故踊る 母親の心がわかって 恐ろしいのか――「本書を読破した者は、必ず一度は精神に異常を来す」と銘打たれた作品。三大奇書としても名高い。


 ついに『ドグラ・マグラ』の下巻を読み終えました。はっきり言って全く理解は出来ていません。が、江戸川乱歩や大槻ケンヂ氏の作品を読む自分にとっては、一念発起して読んでおかなくてはならない作品だったので何とか読み終えられて何よりです。

ドグラ・マグラ (下) (角川文庫)/角川書店

¥620
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『人間椅子』(江戸川乱歩文庫)

 『人間椅子』(江戸川乱歩)

―あらすじ―
 外務省書記官夫人であり、美人作家でもある佳子の元に、突然ある男から原稿が送られてきた。その原稿に描かれていた恐るべき内容とは――「人間椅子」。他9編のホラー、ミステリー作品を収録した短編集。


 漫画にしろ小説にしろ、本当に上手い人というのは、短編が上手い人ではないかと思っています。長々と続けるよりも、一定の長さの中で「面白い!」と思わせてくれる作品はなかなかありません。その点で、この短編集に収録されている短編はどれも見事な作品ばかりです。表題作「人間椅子」もオススメですが、他にも、人間の悪意を描いた「お勢登場」、一風変わった性癖の男が登場する「人でなしの恋」、個人的には地味な良作だと思う「木馬は回る」など、粒揃いの1冊です。

 脳がとろけるかの如く。退廃にして耽美。劇薬にも似た衝撃。

人間椅子 (江戸川乱歩文庫)/春陽堂書店

¥470
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『異邦人』

 『異邦人』(カミュ/訳:窪田啓作)

―あらすじ―
 ムルソーが人を殺した理由は、「太陽のせい」。理性とは、不合理とは何かを書く。


 『異邦人』と言えば有名なので、どのようなものか読んでみました。が、海外小説特有の読みにくさも相まってあまり面白い話ではありませんでした。ただ、Amazonなどのレビューでは「若いうちは読んでも理解できなかったが、改めて読んだら面白かった」とあったので、幾年かすれば面白さに気が付くようになるのかもしれません。

異邦人 (新潮文庫)/新潮社

¥420
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『オーデュボンの祈り』

 『オーデュボンの祈り』(伊坂幸太郎)

―あらすじ―
 コンビニ強盗をした伊藤がたどり着いたのは、江戸時代から鎖国を続けていると言う萩島。そこには喋るカカシがいて、未来を予知するのだったが…


 面白いという評判は良く聞くのですが、私にはどうも面白さが分かりませんでした。何が言いたかったのか良く分からないままに話が終わってしまった、といった感じです。ふわふわしているとでも言いますか。村上春樹ファンには合いそうかと。

オーデュボンの祈り (新潮文庫)/新潮社

¥704
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