赤と黒 -194ページ目

『細川ガラシャ夫人』(上巻)

 『細川ガラシャ夫人』(三浦綾子) 上巻

―あらすじ―
 明智光秀の娘として生まれ、キリスト教徒として信念を貫いた細川ガラシャ。戦乱の時代を生きていくガラシャの姿を上下巻に渡って描く。


 いざ本を開いてみると、早くも数ページ目、父・明智光秀と母・煕子の結婚に関するエピソードで感動して泣きそうになりました。とにかく明智光秀が素晴らしい人物として書かれており、光秀好きとしても嬉しいところです。ただ、後半で、本能寺の変を前にして明智光秀がやや傲慢になってきているのが残念ではあります。

細川ガラシャ夫人〈上巻〉 (新潮文庫)/新潮社

¥637
Amazon.co.jp

『イタリアの食卓』

 『イタリアの食卓』(タカコ・半沢・メロジー)

―あらすじ―
 国際結婚によりイタリア在中の著者が贈る、イタリアの食べ物についてのエッセイ。


 中学生の時に著者の『やっぱりイタリア』という本を買って以来、著者のファンになりました。『やっぱりイタリア』もそうですが、本書『イタリアの食卓』にも「イタリアって楽しいですよ!」という著者の気持ちが全ページに詰まっており、気張らずに楽しんで読めるのが一番の魅力です。

イタリアの食卓 (グルメ文庫)/角川春樹事務所

¥605
Amazon.co.jp

『チンギス・ハーンの一族』 1巻

 『チンギス・ハーンの一族』(陳舜臣) 1巻

―あらすじ―
 モンゴルでは、テムジンという若者が氏族の長となり、チンギスと名乗ることとなった。そんな折、チンギスの幼馴染にしてナイマン国の王女・マリアが、彼を訪ねるためにモンゴルへとやってきた。二人は幼なじみであり、若く美しいキリスト教徒であるマリアに、チンギスはほのかな想いを抱く。


 チンギスハーンの活躍を描いた作品ではありますが、王女マリアなど、チンギス自身よりも周辺の国や人物からの視点が多い作品でした。が、やや文が堅く、シリーズは4巻まであるのですが次を買おうかとは悩み処です。特に2巻以降はチンギスハーンの子供たちの活躍なのですが、私自身がチンギスハーンの子孫に詳しくないせいか、どうも聞きなれない名前ばかりで登場人物がよく分からないので、ストップしています。

チンギス・ハーンの一族 1 草原の覇者 (集英社文庫)/集英社

¥761
Amazon.co.jp

『ようこそ地球さん』

 『ようこそ地球さん』(星新一)

―あらすじ―
 宇宙から来た異邦人や未来へのコールドスリープが人類にもたらしたものとは。シニシズムでペシミズムな傑作揃いのショートショート集。


 『ボッコちゃん』に比べるとやや長い話が多いですが、それでも数ページで読みきれる傑作揃いでした。タイトルに関連してか、宇宙(SF)に関する話が多いのも特徴でしょうか。基本的にはブラックユーモアの話が中心ですが、「小さな十字架」と「処刑」はやや趣が変わっていて、新鮮でとても面白かったです。

ようこそ地球さん (新潮文庫)/新潮社

¥662
Amazon.co.jp

『ボッコちゃん』

 『ボッコちゃん』(星新一)

―あらすじ―
 バーで働く美人の女性・ボッコちゃんは、実はアンドロイド。お客からのお誘いを上手くかわす看板娘だったが、あるとき思い込みの激しいお客がやってきて…(表題作より)。


 1話あたり約10ページ、短ければ3ページというページ数の中に、時にシュールな、時にホラーな、実に様々で面白い内容が散りばめられています。また、最後の最後で明かされるオチが実に上手く、これ以上ないどんでん返しとなっています。個人的に好きなのは、狂気を感じさせる「暑さ」。


ボッコちゃん (新潮文庫)/新潮社

¥578
Amazon.co.jp

『きみとぼくの壊れた世界』

 『きみとぼくの壊れた世界』(西尾維新)

―あらすじ―
 櫃内様刻と櫃内夜月は、実の兄妹ながら恋人に近しいほどの親密さを持っていた。そんなある日、学園で密室殺人事件が発生する。様刻は保健室の住人・病院坂黒猫とともに事件解決へと足を向けるが、それは日常の崩壊を意味していた。


 本格ミステリーと銘打たれてますが、個人的には最初の章での、主人公の妹の精神崩壊が面白かったですね。他の作品でもそうですが、著者のはストーリーよりもキャラクターに寄るところが大きいと思いますし、本作品ならではの「らしさ」が出ていたのではないでしょうか。

きみとぼくの壊れた世界 (講談社ノベルス)/講談社

¥950
Amazon.co.jp

『初恋』

 『初恋』(吉村達也)

―あらすじ―
 16年振りに再会した女性。かつて一度だけキスをした相手であり、主人公にとっては記憶の彼方であったが、彼女には愛の炎が灯っていた。


 余りの面白さに一気に最後まで読みきってしまいました。簡単に言えばストーカーものなのですが、描写が上手く、その世界に引きずり込まれました。とにかくストーカーの女が異常で、「こいつ(ストーカー)、次は何をするんだ」とページを捲らずにはいられません。著者の多くのホラー作品は人間の恐ろしさを描いていますが、本書もその例に漏れない作品です。

初恋 (角川ホラー文庫)/角川書店

¥540
Amazon.co.jp

『わが青春に出会った本』

 『わが青春に出会った本』(三浦綾子)

―あらすじ―
 著者が青春時代に読み、感銘を受けた本を紹介するエッセイ。


 単なる感想だけにとどまらず、その本の著者や本が書かれた背景を考察したり、本を読んだ当時の自分の心境と絡めたり、様々な面から書かれています。解説でも触れられているのですが、読書案内としても最適です。私も「この本を読んでよかった」と言えるような、素晴らしい本ともっともっと出会っていきたいものです。

わが青春に出会った本 (新潮文庫)/新潮社

¥448
Amazon.co.jp

『眠狂四郎無頼控』(一)

 『眠狂四郎無頼控』(柴田錬三郎) (一)

―あらすじ―
 時は江戸。バテレンと日本人の混血であり、ニヒルな剣客・眠狂四郎が様々な難事件や強敵と戦う。


 名前は以前から聞いたことがあったのですが、著者があの『英雄三国志』と同じ柴田錬三郎氏と知り、これは是非読んでおきたいと思い、手にしました。元々は週刊連載モノだったようで、1話1話(1章1章)が20~30ページほどの構成になっており、大まかな流れはあるものの、1話だけ読んでも面白いように工夫されています。そしてその内容も、伴天連(バテレン=キリスト教信者)退治あり、謎解きあり、強敵との一騎打ちあり、主人公を慕う女達のエピソードありと、毎回「ラストはどうなるんだ」とついつい読みふけってしまう小説に仕上がっています。

眠狂四郎無頼控 (1) (新潮文庫)/新潮社

¥720
Amazon.co.jp

『野菊の墓』

 『野菊の墓』(伊藤左千夫)

―あらすじ―
 いとこ同士にして、お互いを想っている政夫と民子。しかし民子には縁談がまとまり、政夫は町の中学への進学が決定する。数年後、帰省した政夫は民子が亡くなっていることを知る――。


 主人公と従姉の純粋な恋と、それを襲う悲劇。私程度ではこの小説の素晴らしさを伝えることは非常に難しく、上手く表現できません。実際に読んでもらうのが一番でしょう。「心に残る1冊」というのは、こういう本のことを言うのだと思います。有名な古典には有名になるだけの理由があることを教えてくれました。

野菊の墓 (新潮文庫)/新潮社

¥309
Amazon.co.jp