『栄光の岩壁』(上下巻) | 赤と黒

『栄光の岩壁』(上下巻)

 『栄光の岩壁』(新田次郎)

―あらすじ―
 戦後間もなくの日本。18歳の時に冬山の八ヶ岳で遭難し、凍傷により両足指を失った竹井岳彦。しかし彼は山を諦めることなく、指のない足で数々の冬山へと挑戦していく。



 足の指を失っても山への情熱を燃やし続けた主人公。たとえ指を失っても、友人を失ってでも冬山に登ることを諦められない。その情熱が読み手にも伝わるような作品です。山の魅力を伝えてくれることもありますが、「自分の好きなことに一途になるの大切さ」、そのようなことを教えてくれる作品でもあります。
 ただ1点、本作に出てくる悪役(小悪党)が余りにも苛つく人物なので不快になります。こういった悪人を出すことで主人公との対比を狙っているのかもしれませんが、それにしても幾度となく登場しては主人公たちに不幸を招く様がくどい。主人公の人の好さに呆れてしまいます。